【その他の事例】学校図書館で働く脳出血患者さんの両立支援事例

2022.12.15

50歳代女性、学校図書館で司書(非常勤)として勤務中。勤務終了後突然の発話障害、右上下肢麻痺にて救急搬送。入院後麻痺は完全に回復したが、運動性失語(発話が困難)、易疲労性が残存し、退院後の職場復帰について入院中に主治医に相談した。主治医より両立支援制度についての説明があり、職場に勤務情報提供書を作成してもらうように指示された。その後リハビリテーション病院を経由して自宅に退院し、退院後はリハビリテーション病院での通院リハビリテーションを継続しつつ、職場復帰について勤務情報提供書を持参のうえ、発症約2か月後に両立支援外来を受診した。

職場からの勤務情報提供書より発症前は週4日、9:00-16:00の勤務で休憩は1時間、仕事内容として、本の貸し出し、図書室の整理、本の読み聞かせ、図書便り(本の紹介)の作成を行っていた。通勤時間は公共交通機関を利用して50分程度、利用可能な制度として時間単位での年次有給休暇の取得、短時間勤務制度が挙げられていた。

女性は血圧治療のための投薬と運動性失語のリハビリテーションのため、それぞれ別の病院に2週間~1か月毎に通院が必要であること、言語障害が残存していることから読み聞かせはまだ難しいこと、易疲労性のため復帰直後からフルタイムでの勤務や週4日の通勤は不安であることを話した。

両立支援外来主治医は勤務情報提供書と本人の話に基づき、①本の貸し出し、図書室の整理、書類の作成は可能だが、読み聞かせはまだ困難であること、②易疲労性のため通勤が負担になっていることから、リモートワークを取り入れていただき、通勤頻度を抑えていただきたいことを初回意見書として提出した。

本人は短時間勤務制度、リモートワークを利用することを条件に初回意見書提出後2週間で職場復帰を果たした。その後も外来リハビリテーション、投薬治療を継続しながら仕事を継続し、発症後約6か月で本の読み聞かせも再開し、リモートワークは終了となり、フルタイムでの勤務を継続している。本例のように当初職場から利用可能な制度としてリモートワークは挙げられていなかったが、本人・主治医の意見をくみ取っていただき、新たに制度を活用できるような柔軟な対応が職場復帰、就労継続を促進するうえで期待されると思われた。